121年目への一歩
~木の価値を語り伝える会社へ~

2025.12.23地域密着期 

120周年の節目を迎え、私たちはあらためて「自分たちの原点=木」を見つめ直し、その価値を未来へつなぐための新たな一歩を踏み出しています。
本コラムでは、121年目に踏み出す桝徳がどのような未来を描いていくのか、その展望を次章にて代表・星野がお伝えします。

120年の節目に立ち返る “木と暮らし”の原点

創業120周年という節目の年を、私たちはあらためて桝徳の歩みを振り返る機会としました。連載コラムでは、創業した明治38年を起点に住宅史の変遷をたどりながら、自分たちがどのように時代と向き合い、地域とともに歩んできたのかを探ってきました。

その過程で社内に芽生えたのが、「材木商としての原点に立ち返ろう」という機運でした。桝徳は材木商として始まり、時代が変わっても“木とともにある会社”として地域に根を下ろしてきました。この足元を見つめ直したことで、私たちが次の100年に向けて進むべき方向性が少しずつ形を帯びてきたように感じています。

そして本コラムの締めくくりとして行った戸田都生男教授浅田茂裕教授へのインタビューは、この「原点回帰」という気づきを、より強く、より具体的なものへと深めてくれました。

戸田先生のインタビューでは、「暮らし」が時代とともに大きく変化してきたことを、改めて実感する機会となりました。
桝徳では、「顔の見えるつくり手と共に時代に合った暮らしを創造します」をミッションに掲げています。

いま、スマホやAIの普及によって、家族が直接顔を合わせなくても生活が成り立つようになりました。家の中にいても、家族同士が顔を合わせずLINEで連絡を取り合うといった光景は、日常のひとコマと言えるでしょう。

しかし「時代に合った暮らし」とは、そうした利便性に合わせるだけではなく、あえて不便でも人と人がつながる場所を家の中に設け、提案することではないかと考えています。家というのは、家族というつながりの中で大切な場所だと考えているからです。
この視点は、戸田先生のおっしゃる家の空間的価値(ダメージ・ジーンズ的ゆとり)にも通じるものがあると感じています。

一方、浅田先生のインタビューでは、材木商として大きな衝撃を受けました。私たちは住宅の資材として木材を扱ってきたわけですが、歴史的にみると木材は軍事的に使われてきた時代が長く、生活の必需品としての側面が強かったと言えます。また、「木っていいな」と自然に感じる私たちの感覚というのは、古くから培われた日本人の文化に由来していることも印象的でした。

「木材と暮らし」というところに、創業当時から関わってきた私たちとしては、木材をどう使っていくか、どう暮らしていくかということについて、もっと丁寧に発信していかなければならないと感じています。

ときがわの山で実感した、“木を受け継ぐ”ということ

ときがわの山で実感した、“木を受け継ぐ”ということ

先述したように、社内で「木」を原点とする動きが起こったわけですが、それをきっかけに「木」をもっと知りたいと思い、先日、林業ハイキングというイベントに参加してきました。埼玉県のときがわ町の山を、林業の専門家と歩きながら、山や木についての説明を受け、山の木を伐って木材にする現場まで見学するイベントです。

そうした木材の生産現場に立ち、改めて木の心地よさや温かさを感じるとともに、埼玉には多くの木があることを実感しました。

桝徳は材木商として、そして住宅設備や建材の小売業者として、長い年月にわたり木を扱ってきました。当たり前のことですが、木は植えてすぐに使えるものではありません。今私たちが使っている木材は、前の世代の人たちが植えて譲り受けたものであり、今植えた木は次の世代が継承して使うことになります。

こうして連綿と続いてきた木の継承が、山を守り、今の私たちの暮らしにつながっています。山に立ち、木材が産出される現場を見ることで、その事実を実感として捉えることができました。

そして、木に携わり120年続いてきた桝徳を、これから次の世代につないでいくことの重みについても、改めて考えさせられました。

木の価値を届ける―地域材ブランド化へ

木の価値を届ける―地域材ブランド化へ

120年前に材木商から始まった私たちですが、お取引のある皆様から見たら「桝徳=住宅資材の販売会社」というイメージが強いのではないでしょうか。実際、材木商から住宅設備・建材の小売業へと方針転換して30年以上が経ちます。その頃からお付き合いのあるお客様はもちろん、桝徳の社員にとっても「桝徳=住宅資材の販売会社」という認識が定着しています。では、なぜ今また「木材」への回帰なのか。それは、住宅業界全体の動きが関係しています。

先日も、パナソニックが住設機器・建材事業を担うパナソニック ハウジングソリューションズをYKKに譲渡するというニュースがありましたが、メーカーを含め住宅業界はどんどん統合され、変革を求められる時期に来ています。そういった大きな流れの中で、桝徳も、ただ建材を販売するだけではなく、新たな役割へと変わっていかなければならないと考えています。

私自身、桝徳に入社し地域の工務店や設計事務所の皆様とお付き合いさせていただく中で、家づくりというのが地域の暮らしだけでなく、地域経済にも深く根ざしていることを実感してきました。私はよく「“住”産業は地場産業である」とお話しさせていただくのですが、それは、家づくりが単なる“住まいという容れ物”をつくる作業ではなく、“住む”に関わる地域産業全体を支える営みだと考えているからです。桝徳は、その“住”産業全体をサポートする役割を担っていきたいと感じています。

例えば、桝徳が事務局として携わらせていただいている「さいたま家づくりネットワーク」のように、住宅業界の川上・川中・川下をつなぐハブとなり、地域とそこに住む人々の暮らしを活性化させていく取り組みが必要だと考えています。

その原動力のひとつとなるのが、今回あらためて社内で共有された「木材をどのように使っていくか」という視点です。より具体的には、「地域材のブランド化」です。地域の木材の良さを、林業や我々のような業者、工務店、設計事務所など、地場の産業に携わる人たちが一緒になってエンドユーザーに発信し、活用につなげていくことが必要だと考えています。

今回、ときがわ町の山で伐採現場を見てきたわけですが、そのような現地体験から始めるのもひとつの方法だと感じています。

木材を生産する山という“工場”を見る、いわば大人の工場見学のような機会をつくるわけです。木材には定価や相場が明確にあるわけではないため、大手企業の効率化の流れに巻き込まれると価格競争に陥りやすく、地域を活性化するまでには結びつきません。

地場産業として、林業やその下流の川中・川下の企業が活性化するためには、木材の価値を理解したうえで販売していく仕組みが必要だと考えています。

大人の工場見学として、ときがわ町の山を歩き、木に触れ、匂いや手触りを感じ、専門家から話を聞きながら伐採現場を見ることで、木の良さを深く知っていただく。そうした体験を重ねることで、私たちが長年培ってきた “木っていいね” というストーリーをエンドユーザーの皆様にも実感していただけるのではないかと思います。

121年目のスタートとして―木の価値を語り伝える

こうした大人の工場見学のように、木の価値を知ってもらうという取り組みは、1年や2年で成果が出るものではなく、10年単位で続けていくプロジェクトだと考えています。最初は少人数からのスタートになるかもしれませんが、徐々に参加者が増え、やがて大きな活動へとつながっていくのではないでしょうか。

私自身も、小さなところから足元を固めていく必要があります。大人の工場見学を始めたとしても、今の私が一人で山に入れば迷ってしまうでしょう。まずは、埼玉の木の産地を知ることから始めなければなりません。

そして、それは桝徳の社員にとっても同じです。木材を扱う会社である私たちが、木についての知識を深め、木とともにある未来を語れるようになることが重要だと感じています。社内で生まれた「木」への原点回帰の動きを全体に広げ、さらにお取引先や地域の皆様を巻き込む大きな流れへと育てていきたいと考えています。そうした取り組みが会社の強みとなり、いま大きな変動期を迎えている住宅業界を乗り越える力となって、やがて木を継承し地域を活性化させる存在へとつながっていくはずです。

2025年は、創業120年を振り返る中で「木」という私たちの原点を社内で共有し、木の価値を語り継ぐという次の指針を見いだした一年となりました。

そして121年目となる2026年は、その第一歩として、山や森、木について知り、伝え合える場をつくっていきたいと考えています。まずは小さな情報発信から始め、それが木の良さや価値を広げていく第一歩になると期待しています。