「干す」という家事が消えた日 ~暮らしを変えた住宅設備の進化~

2025.10.31小売業期 

「干す」という家事が消えた日 ~暮らしを変えた住宅設備の進化~

変わりゆく、家事の風景

桝徳が創業して120年。 住まいも社会も、そして“家事の風景”も、大きく様変わりしてきました。
特にこの30年、共働き家庭の増加や衛生意識の変化、そしてテクノロジーの進化により、住宅設備はただの道具から、なくてはならない“暮らしのパートナー”として存在感を増しています。
今回は、そんな変化を象徴する住宅設備の進化と、私たちの暮らしの物語をたどってみましょう。

家事の重労働から解放した昭和の“三種の神器”

1950年代後半、戦後の家庭に「三種の神器」と呼ばれる白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が広がりました。なかでも洗濯機は、重労働だった家事を大きく軽減した代表格です。
洗濯板でこすり、たらいで水を替え、冬は手がかじかむほど――。そんな日常から人々を解放した洗濯機は、次なる住宅設備の進化につながっていきます。

天気を気にせず洗濯を-衣類乾燥機

重労働だった洗濯をボタンを押すだけに変えた洗濯機ですが、洗濯が終わった後の「干す」作業は、家事の中でも依然として時間がかかり、また天候に左右されるものでした。そんな「干す」風景を一変させたのが衣類乾燥機です。

黎明期 ー 初めての登場

1965年松下電器(現パナソニック)がドラム式電気衣類乾燥機「NH-100」を初めて発売しました。翌年には三洋がドラム式ガス衣類乾燥機「CD-300」を発売。その後各社が、ガス式衣類乾燥機を発売するも、ガス式乾燥機は地域によるガスの種類の違いや製品価格の高さ等により普及しませんでした。

乾燥機=贅沢品? 普及しなかった理由

衣類乾燥機は発売されたものの、価格や設置場所、そして必需性の低さから、洗濯機と比較すると広く普及するには至らず、「干す」という家事は主に主婦の役割に。乾燥機を備えたコインランドリーの登場により、乾燥機を使用したいときは、コインランドリーを利用することもあったようです。

成長期 ー 共働き家庭に広がった衣類乾燥機

1990年代年代共働き世帯が専業主婦世帯を追い抜く逆転現象が起こりました。そのような時代背景を追い風に、衣類乾燥機は広く普及していきます。

1992年ガス式衣類乾燥機「乾太くん」が誕生します。電気が主流だった時代にリンナイ株式会社はガス式の乾燥機を発売。海外では機械乾燥が一般的だったことから、前会長の内藤 明人氏が海外視察を経てガスドライヤーを日本に取り入れようと開発を始め、発売に至りました。
また、1997年国産初のドラム式洗濯乾燥機を松下電器(現パナソニック)が発売。この後、電気式のドラム式洗濯乾燥機も広く普及し始めます。

初代乾太くん RDT-40
初代乾太くん RDT-40
出典:リンナイ株式会社 HP

成熟期 ー 暮らしの変化とリンクした「乾太くん」大躍進

2000年代後半になると、女性の就業定着化、花粉やPM2.5や黄砂などの大気汚染リスク、また、コロナによる衛生意識の変化により、乾燥機が広く普及していきます。

急速な伸びと満足度99.4%の理由

毎年2万台前後の販売台数で推移していた乾太くん。2016年には累計50万台を達成。その後6年ほどで累計販売台数は100万台へと急速に販売台数をのばしました。
2020年のユーザーアンケート(リンナイ調べ)では、満足度99.4%となり、高い支持を受けていることがわかります。このような販売台数の急速な伸びには、ユーザーの高い衛生意識と満足度99.4%の使用感にあります。

▶衛生意識

リンナイ(株)は、一般財団法人 北里環境科学センターの協力のもと、ガス衣類乾燥機「乾太くんRDT-54S-SV」による2種のノンエンベロープウイルスの除去性能評価を実施。その結果、ノンエンベロープウイルス①を99.99%除去、②を99.6%除去できることを確認しました。

乾太くんのノンエンベロープウイルスの除去性能評価については、STAFF Vol.158にて特集しています。

▶高い満足度

ガスならではのパワフル乾燥で乾燥時間が電気式の約1/3に抑えられるため、時短に。また、乾燥時間が短い分コストが抑えられ、1回の乾燥コストは、6kgで96円、9kgで149円(リンナイHPより)となっており、経済的なことも魅力の一つです。

晴れでも雨でも「干さない」毎日に

家事の中でも比較的多くの時間がかかり、天気にも左右される「干す」家事。乾燥機が登場したことで、ボタンを操作するだけで終了し、晴れでも、雨でも気にせず洗濯ができるようになりました。
また、外に干す必要がなくなったことで、乾燥機を設置している洗面所にファミリークローゼットを設置したり、家事室を作るなど、家の間取も変化してきています。

暮らしを変えた“あると手放せない”設備たち

時代のニーズに応え進化した乾太くんですが、同じように、家事の姿や家の形を変えた住宅設備があります。登場や普及の背景を見ることで、私たちの暮らしのニーズや変化を見ることができます。

食器洗い乾燥機 ー 新三種の神器は生活にゆとりを生む

昭和の三種の神器である洗濯機、そしてその後誕生した乾燥機は、重労働だった洗濯・干すという家事を手軽なルーティンへと変えていきました。そして、現在、令和の三種の神器の1つとされる食器洗い乾燥機(以後、食洗機)は、家事時間を短縮させ、生活にゆとりを生み出しました

日本初の食洗機が発売されたのは、1960年。「日本女性を家事労働から解放したい」というパナソニックの創業者松下幸之助の思いから開発が始まりました。
しかし、当時は、「白黒テレビ」「洗濯機」「冷蔵庫」が三種の神器とされていた時代。食洗機が贅沢品とされていたことや、洗濯機のように大きなサイズで、日本の住宅に合わないということから普及はしませんでした。

普及し始めたのは、2003年ごろから。共働き世代の増加や新築での標準装備化、さらに、製品自体の改良や省水化などが普及の要因と考えられています。食洗機を使用するメリットは、家事時間の短縮だけでなく、高い節水効果もあることです。食洗機を導入することで、生活にゆとりが生まれるだけでなく、環境に優しい暮らしの一助となります。

トレンドやデザインの変化が早いキッチン。ここ数年、フロントオープンタイプの食洗機が人気ですが、その火付け役となったのが、Miele(ミーレ)等の外国製品の影響です。高い洗浄力と食器だけでなく調理器具まで洗える大容量サイズであることが人気です。

出典:ミーレ・ジャパン株式会社 HP
出典:パナソニック株式会社 HP

その影響もあり、2023年にPanasonicから幅60cmのフロントオープンタイプ食洗機が登場しています。

Panasonic フロントオープンタイプ食洗機NP-60EF1Wについては、STAFF Vol.188にて特集しています。

大型タイプの人気が高い一方で、核家族や都内の狭小住宅向けとして、依然としてコンパクトな食洗機も根強い人気を保っています。Panasonicから、2025年2月に幅45cmのコンパクトなフロントオープンタイプ食洗機が発売されるなど、今後の動向にも注目です。

スマートホーム ー 手軽&安心な未来の暮らしを

空調も照明も全自動で、いつも心地よい空間を保つ―。一昔前に描かれたような近未来の暮らしは、スマートホームという形で、既に現実のものとなりつつあります。

日本初のスマートホームが出来たのは、インターネットが普及する前の1989年のこと。六本木に竣工した「TRON(トロン)電脳住宅」は、坂村 健氏が設計し、NTTや三菱電機、サンウエーブ工業(現LIXIL)など、18社の企業連合体が結成し、作り上げ完成しました。普及し始めたのはそれから20年ほど後のこと。スマートフォンの普及と共に広がりつつあります。
TRON電脳住宅に参画したLIXILは、現在、手軽にスマートホーム化できる「Life Assist2」を販売しています。

出典:株式会社 LIXILHP

「Life Assist2」を使用することで、スマホで照明やシャッターを操作したり、自動設定もできたりします。

LIXIL Life Assist2については、STAFF Vol.182にて特集しています。

スマートホームが注目されているのは、その便利さだけでなく、見守り・防犯機能にもあります。今後、高齢者の単身世帯の増加が見込まれている中、安心・安全に暮らしていくためのシステムづくりの一助になるとも期待されています。

宅配ボックス ー 新しい生活スタイルと人材不足に応えた

スマートホームのように、住宅設備が新しい生活様式を生み出す一方で、社会情勢の変化によって生み出された住宅設備もあります。

宅配ボックスもその住宅設備の1つです。2019年のコロナウイルス流行により、非接触で荷物を受け取る必要性があったこと、またネット通販の増加に伴う宅配業者の人材不足や再配達による負担増加、環境への配慮から個人用の宅配ボックスのニーズが高まります。以前では一般的ではなかった置き配も浸透しており、宅配サービスの利用経験率は、2019年には26.8%だったところが、2024年には72.4%まで高まっています。また、国土交通省は2025年6月26日に、荷物の「置き配」を宅配便の標準サービスとする検討に入っており、今後も置き配の利用と、それに伴う宅配ボックスのニーズの高まりが予想されます。

LIXILでは、スマートホーム化のアイテムとして、2018年に業界初 IoT宅配ポスト「スマート宅配ポスト」を発売しています。荷物が預けられると、アプリに通知が届く仕組みとなっており、ドライバー不足に対応し、さらに非接触型商品のニーズを先取りした形となっています。

出典:株式会社 LIXILHP

暮らしにとけ込む住宅設備

洗濯機は、かつて家事の重労働から人々を解放し、暮らしに欠かせない「必需品」として定着しました。同じように水洗トイレやシステムバス・キッチンも、今では「あって当たり前」の設備です。
一方で、衣類乾燥機や食洗機は普及に数十年を要しながらも、時代の変化に支えられて「あると手放せない存在」へと進化してきました。その過程では改良やリニューアルを重ね、消えていった設備も少なくありません。

住宅設備は10年、20年と長く使われることを前提に、暮らしの中で静かに寄り添う“パートナー”であり続けなければなりません。だからこそ、私たちは設備を単なる道具ではなく、お施主様の未来の暮らしを支える存在として提案していく必要があります。
桝徳は、お取引させて頂いている166社のメーカー様と共に、多様な暮らしの変化に応えながら、お客様に最適な住宅設備をお届けしてまいります。お取引先メーカー様の詳細については下記のバナーよりご確認下さい。

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